こんにちは〜
うにくまです。
今日のテーマは、多くの人がワードローブに持っているであろう、Tシャツ!
街を歩けばたくさんのTシャツ!
昨年、今年とよく売れているUNIQLO UのTシャツを持っている方も多いのでは?
小ロット(少量生産)で手頃なオリジナルTシャツも作りやすくなりましたよね。
Tシャツが溢れている!!
でもこれぞ、灯台下暗し。
そんなTシャツのこと、よく知らないな・・・
いい生地です!って言われても、
「いい生地なのか〜」ってなっちゃうし
ハイブランドも使ってます!って言われても、
「ほほ〜」ってなっちゃうし。
いいTシャツってなんだろう。
こんなざっくりなうにくまの疑問に答えてくれる人、誰かいないかしら・・・
・・・
・・・・
・・・・・・
い、いるーーーーー!!!!
Tシャツ系の素材に対して変t、愛を持って仕事をしている人が・・・!!!!
ということで、よろしくおねがいしま〜す!!
Tシャツについて教えてください!
うにくま:買ったんです。(iPad)ドヤア
山本:おお〜いいなそれ欲しい。
うにくま:そうでしょうそうでしょう。描いてあげますよ、山本さんのことも。
山本:ア〜うんはい
ulcloworks Inc.代表取締役
山本 晴邦さん
うにくまもお世話になっているカットソーメーカーさん
「なんかこう、キュって感じ!」とか「もにゅって感じ・・・」
みたいなうにくまの表現にしっかり対応した提案をくれるツワモノ
さて、今回のテーマはTシャツなんですけど。
ここ数年、ノームコアからストリートの流れ、さらには猛暑の影響もあってか、
Tシャツ素材のアイテム需要が高いな〜と思っているうにくまです。
※以下、専門用語や理解しにくそうな内容には、そのすぐ下の行に”うにくまポイント”でゆるめの補足をつけているよ!参考にしてね!
いいTシャツってどんなもの?
うにくま:まずズバリなんですけど、カットソー屋さんから見ていいTシャツってどんなものですか?
山本:えっと、まず言うとよくSNSでも「○○ブランドと同じ生地」「売れてる生地」とかそういう紹介を聞くんですがだからいい生地かというと一概にそういうことではないですね
うにくま:ぬは~核心・・・!
山本:とはいっても粗悪品を使っているかというとそういうことでもないので安心してください。
うにくま:ですよね。
山本:そのカラクリは結構単純で、例えばどこかの生地屋でスーピマの60/2天竺(ろくまるそうてんじく)が100反動いた!ってことが起こると、生地作ってる人たちって「スーピマで超長綿だからいいんだな!」ってなっちゃいがちなんです。でもちゃんと裏とるとその100反って大きい企業がたまたままとめて発注してただけ。みたいなこともある。
うにくま:なるほど。数字のマジックで生地そのものの良さが後付けになるわけですね~
- うにくまポイント※スーピマは繊維の種類!綿は綿花のワタから作られるけど、その質によって一本の繊維の長さが違うよ。スーピマは超長綿といって、そこそこ長いけど、結構出回ってる繊維。ちなみに一般的には長ければ長い方価値が高くなりやすいよ。もっと言うと超長綿とは平均繊維長が約35mm以上の綿花の総称だよ。
- うにくまポイント※60/2天竺は60番の糸を2本で作った天竺のことだよ。天竺(てんじく)は編み方の一種。そう、Tシャツは編み物の生地をわざわざカット(裁断)してソー(縫う)するから、カットソーというのだ!糸には番手があって、数字が大きくなるほど糸は細くなるよ。
山本:確かに悪いものなんかじゃ全然ない。スーピマって着心地もいいし。でも、同じくらいいいものもたくさんあるし、同じスーピマの60/2天竺でも編み方や後加工でいくらでも風合いは変わるから、僕はブランドさんに対しても一概に「いいもの」と紹介はしないかな。
- うにくまポイント※生地はカットソーに限らず、織った(編んだ)のち、後加工するものもあるよ。薬剤を混ぜて風合いをガラッと変えたりもできるんだ。結構化学の世界で、そこに首突っ込むと「アミノ酸が・・・」とか「分子が・・・」とか言われてうにくまはへらへら笑っているだけになるよ。
うにくま:スーピマはもはや定番ですもんね。なんとなく認知されてて品質が担保されてる素材って感じでしょうか。
山本:うーん、同じスーピマでも、編み方も同じ天竺でも、撚糸(ねんし)の仕方で随分表情やクオリティも変わってくるんです。だから僕たちはお客さん(ブランドさん)の提案する世界観やテイストが好きで買いに来る消費者の人たちを理解しないといけない。そのブランドごとに「いいもの」の定義って変わるはずなんですよ。リネンを定番に使うナチュラル系のブランドとゴリゴリのストリート系のブランドに、たくさん動いたスーピマだからって理由だけで同じ60/2天竺を「ハイいいものですよ」って提案するって完全に生地屋目線。きちんと生地のことを理解しているプロとしてやっているからこそ、そのブランドごと、さらにその客層の先ごとに存在するはずの「いいもの」の概念を捕まえて、それを加工、編み方、糸の種類、撚糸、そして価格まで考慮して提案していかないとなと思います。
うにくま:「いいもの」と言い切るには、やっぱり”糸まで”ですか。
山本:そうですね、なぜならそこが僕らや作って消費者に提供する側の責任だと思うんです。
消費者の人たちはそこまで知らない。だからこそ「いいものだよ」「○○が使ってるよ」みたいなそのもの自体について曖昧な情報だけを、消費者に伝えたくはないですね。
とはいえ高級なTシャツの生地、見せて欲しい!
うにくま:さっきまでの話をぶち壊すようなのですが
山本:はい
うにくま:Tシャツって原価高く作ろうと思うとどこまでもいけるんですかね?シャツ地とかそういうのはよく見るけど・・・
山本:同じように結構どこまでもいけますよ。布帛と一緒です。例えば・・・・
山本:これとか。シーアイランドコットンの超長綿を使ったスムースですね。
- うにくまポイント:シーアイランドコットン(海島綿)は、カリブ海西インド諸島の限られた島で採れる「幻の繊維」と呼ばれるコットンのことだよ。その土壌で育つ綿は滑らかで肌感触がよく、「絹のような光沢、カシミヤのような肌触り」と称されイギリス王室も愛したとか。土壌で変わるってなんだかワインみたい。
- うにくまポイント: スムースは天竺(てんじく)と同様編み方の一つ。その名の通り、滑らかで肌滑りがいいよ。天竺が生地の表・裏で見た目が大きく違うのに対して、スムースは表も裏も見た目のクリソツです。
うにくま:うあああああああめっちゃいい!!これちょっと形を計算されたTシャツ作られたら買います。なんていうか、手触りなめらかなのにしっかりしている。繊細さと安心感あるしっかりさも兼ね備えた感。
山本:これは結構お高いです。それでも、国内デザイナーズブランドが使えないこともないお値段ですね。
うにくま:欲しい。最近の売れてるTシャツって「洗ってもくたびれなさそうなしっかり感」が結構キーワードなのかなと思っていたんですが、そのぶんガサつきがあるものも多くて。これはしっかり感と優しい肌あたりが両立されていますね。
山本:あとはこれとか。
うにくま:おおお・・・これは、ぱっと見秋始めのニットような見た目・・・でもタッチはもっと清涼感ありますね。
山本:ウールが一緒に編まれてるのでそう見えるのかもしれないです。Tシャツに使われるカットソー生地は綿100%がメジャーですが、使える繊維も実は豊富。もっと自由な世界なんですよ。
うにくま:たしかに。Tシャツといえばコットンって思いがちかもしれません。
山本 : 前にニュージーランドに視察にいって知ったんですが、ニュージーランドのトレイル系のスポーツをされている方は、ウールの入ったTシャツを着ていることが多いらしくて。
うにくま:ウールの産地の方々は、「夏こそウールなんだ!」っておっしゃいますもんね~
山本:そうですね、ただ、ここでもさっきの話に戻るようなんですが、ニュージーランドってめっちゃ羊じゃないですか。
うにくま:めっちゃ羊のイメージっすわ~
山本:そう、だから比較的ウールが安いんです。日本でそこに取って代わられるのは化学繊維。消耗品レベルになってくるとやはり価格は重要です。確かにウール混のカットソーは機能的にも理にかなってて目新しいものだけど、日本では、スポーツ選手の消耗品としては優しくないと考える側面もあるんです。
うにくま:なるほどです~
山本:このカットソーもそこそこのお値段になります。ハイキャリア系ブランドさんのお仕事対応トップスとか、ハイエンド向けのライフスタイルブランドさん向けの素材と思って提案していますね。
うにくま:これきもち〜。欲しい〜。(語彙力
Tシャツって深いんですね
うにくま : Tシャツってクローゼットに一枚は持ってる!って人が多いくらい手に取りやすい商品だと思うのですが、綿は綿でもその植物の種類とか、そもそも綿以外の繊維を混ぜるとか、同じ綿を使っても最後の仕上げを変えてみるとか・・・・掘れば掘るほどディープなTシャツの世界・・・
山本 : そうなんですよ!親しみやすいけど、本当に面白くて。
Tシャツって、メンズだと多くの人が取り入れやすいアイテムなので、ブランドさんによっては「うちのブランドの店を初めて訪れた人が手に取りやすいアイテム」と考えて、他のアイテムよりも価格を下げて作りたいと相談されることもあるんです。
うにくま : 導入品ってことですね〜
山本 : そう。でも導入ってことは、お客さんとブランドのファーストタッチでもあるわけです。
うにくま : だいじですよね、一度ついた第一印象って挽回するの結構大変です。
山本 : 取引のあるブランドさんにもその事例がありました。少しいつもより価格を抑えたTシャツを作るけど、ブランドの魅力が最大限伝わらないと意味がない。¥15,000のトップスを売っているブランドが出す、¥7,000のTシャツは、Tシャツとして安くはない。でもその許容下代ギリギリをクリアしながら、お客さんに求められるものを作れるよう努力されてましたし、それが鬼のように売れていましたね。
うにくま : 「求められるもの」を因数分解して、何をやめて何を入れるかってことを作る側が取捨選択されているんですね
山本 : 「めちゃくちゃ売れてる生地だから」とか「ハイブランドが使っているから」じゃなく、「僕たちのお客さんにはこれがいい」「ブランドとしてこれを提供したい」と、消費者を想って選び、作り、売られている服がきちんと届いて売れている。これって消費の仕方を含めて「いいもの」だなって思うんです。
うにくま : Tシャツがどこまでも深い。
山本 : だから高い服がいいってことじゃないですよ。UNIQLO UのTシャツだって、しっかり考えられてる。
うにくま : 今日くまが着てるの、UNIQLO Uです。みんな着てるので買ってみました!
うにくま : しっかりはしてるものの、良くも悪くもカサっと感があるのが特徴かなって思います。
山本 : そのカサっと感は、ひょっとしたら空紡由来かもしれませんね。ちょっと僕、指がいま皮剥けまくってて感触がよくわからず、たぶんで申し訳ないのですが・・・。
- うにくまポイント: 空紡(クウボウ)っていうのは、生地にする前の糸の紡績の種類!空気紡績機といって空気の力で糸をブオオオオってやって紡績します。つまり何が言いたいかというと早い!一般的にコストが安価な紡績方法だそうです。
- うにくまポイント : 山本さんはこの一週間前に謎の高熱で苦しみ、その結果生まれ変わったそうで、取材日も指の皮が脱皮中でした。解脱・・・!
山本: 巨大ロット、安価な方法、それによって生まれる風合いをうまくプロダクトとして製品と価格に落とし込むのは、消費者の生活を考える故でしょう。きちんと”自社の立ち位置”と”そこで求められるもの”のバランスを見てアウトプットしている「いいもの」だと思います。
うにくま : わたしの周りもアルバイトの子から旦那氏の友達までめっちゃ持ってますね・・・
山本 : 作ってる人たちは、そういうことを意識しないといけないな、と思いますね。貴重な編機だから売れる。とか、たくさん売れてるから売れる。とか、そういうことではないんです。例えば、最近よく高付加価値として名の上がる生地に”吊り編み”という方法があります。
- うにくまポイント : 吊り編み機はそのまま、吊りながら編む機械。昔は主流だったカットソーの編み機だよ。一台で一気にたくさんは編めないけど、独特の風合いがあって、素材としてタフ(強い)っていう声もあるよ。
うにくま : (触る)は〜ん
山本 : 僕自身、カットソー工場にいてから営業、でいまメーカーをやってるのでわかるんですが、吊り編みって確かに独特の風合いがあって、特に裏毛(うらけ。パーカーなどに使われる生地)は噛みたくなるんですよ。
うにくま : (この人はいったい何を・・・?)
山本 : なんかこう、ずっと噛んでいたい。
うにくま : ・・・おいしいんですか・・・?
山本 : 美味しいです。
うにくま : おおオ・・・噛んだことがある人の証言・・・
山本 : でも、その風合いって万人に伝わりやすいかっていうと伝わりにくいんです。
うにくま : でしょうね。
山本 : その風合いの差が伝わりにくいとなると、出会った瞬間に伝わる付加価値って、「貴重な吊り編機」というただそれだけなんですよね。
うにくま : 確かにこの風合いはわかりやすく万人が「気持ちいい!」と納得する風合いじゃないですね。
山本 : それだけで普通にポッと出して、¥3,000越えるTシャツが何千枚何万枚売れる!って、かなり考えにくい。でもそれが、わかっていない作り手も多くいる。そうするとただ「いいもの」って言っても別のだから”いいもの”という曖昧な言葉の定義は難しいんです。
うにくま : う〜ん、お店に行ってTシャツを見るときの角度が変わりますね〜
山本 : どの業界も、どんなものも、”いいもの”の定義って難しいと思うのですが、Tシャツも一緒ですね。でも、一つ言えるのは、「ちゃんと作っている人間が受け取り手のことを考えて作り、届けているもの」 は”いいもの”なんじゃないでしょうか。
うにくま : 今日は学びが多すぎた。
「Tシャツ」という消費財にも近いファッションアイテムについて勉強した今回。
Tシャツと一口で言ってもディープな世界が広がりすぎていて、取材中はずっと頭がぐるぐるしていました。
ぐーるぐる。ついでに今度和歌山のカットソー工場に連れて行ってもらうことになりました!
そちらもまたアップしますよ〜
最近うにくまは、ブランドの立ち上げや商品作りにおいてとても深く考えることがあります。
その内容はざっくり言うと「ユーザーの損失」「ユーザーの利益」/「生産背景の損失」「生産背景の利益」について。
“いいもの”と”その裏側”。
このバランスはとっても難しいのだけど、それに向き合って悩みに悩み抜かないと、いま問題になっている労働賃金の問題やサスティナビリティみたいなものにも向き合っていけない時代になったのではないかなと思うのでした。
次回は静岡・浜松の機屋(はたや)さんへ!
生地を織ってるって、どんな様子なのか。
にんげんの服の生地はどんな風にできあがるのか、くまがチェックしてきます!
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