実店舗とEC売上のバランスについて

アパレル業界の皆様、お疲れ様です。いや、本当に大変な時期ですね。弊社もアパレルに生息する人間の端くれなので、毎日結構な閉塞感の中、業務に携わっております。

店舗が閉まっている事もあり、販売員さんは自分が今何ができるかを一生懸命模索しているでしょうし、EC担当者は会社の一筋の光という大きな期待を背負い、全社の在庫をどう捌くか奮闘しているでしょうし、上層部のおじさんたちは日々、おうちでどう美味しいご飯を食べるか試行錯誤している事でしょう。

EC周りのインフラも急速に進化しているのが日々のニュースからひしひしと感じますので、今後はリアルとWebの売り上げの比重も少しは変わってくるのかな?と思います。そうなってくると考えるべき事は今後の「実店舗とEC」の売り上げのバランスでしょうか。本日はここの適正値について考えたいと思います。

EC化率はどの程度が適正なのか?

これはよく議論が巻き起こる件ですね。ECの方が販管費が低く、Webにシフトする事で利益率を高めていく、というのが大きな目的でしょうか。しかし、これには前提がありまして、過去大手アパレルがECをスタートした背景には、「既にブランド認知がある」「店舗に顧客がついている」という事実がありました。つまり、EC運用においては初期の顧客獲得コストが省かれた状態ですね。昨今ではこの顧客獲得コスト、Web用語で言うところのCPA(Cost Per Action)はWebの方が高いのでは?という議論もあります。まぁ店舗は初期の改装工事から什器代、家賃に販売員の人件費と、イニシャルコストやランニングコストが高いので、ECの方が安価にスタートできるというのは間違い無いのですが、日々の運用に関してはどちらがどうと言うより、うまく組み合わせながら効率化を図るのが良いのでしょう。

大手では大体10~20%の間が現在のEC化率なので、多くの企業がここを目標に運営している印象はありますね。しかし、ユニクロのようにEC売り上げが832億円(単体ブランドでは国内ぶっちぎりの一位)でEC化率が9.5%という企業もありますので、企業単位で適正値など変わってきます。ていうか、まだECって多くの企業が天井にぶち当たった経験少ないから適正値なんてわかる訳もないのですが。

ブランドの事情によって変わる「適正値」

企業によっては店舗からECにシフトしたくても中々できない事情もあったりします。例えば百貨店に出店しているアパレルは百貨店との契約内容が「消化仕入れ」なので、売り上げに対して百貨店に支払う金額も決まります。当然、百貨店側はアパレル企業が顧客をECに送客する事をNGにしますからEC化率が伸びにくい。結果、百貨店アパレルはショップを減らしながらECの比重を増やしていく、といった動きを見せています。

また、顧客の年齢層から、ECでの販売を大きく促進できない場合もあり、ブランド属性によってもバランスは変動します。極端な話、シルバー世代にECで積極的に購入してほしいと思っても無理があるでしょう。価格帯によっても、物をしっかり見てからでないと決済できないとう事情も出てきたりと、ブランドや企業によって事情は異なります。

大きな流れで言うと、国内は既にアパレル市場が成長していませんので、出店は抑制しながらECに比重を持たせる動きにシフトはしています。海外に向けてはまだブランド認知が無い市場はリアルでの出店メイン。結局、既に需要があるところでしかECは効率的ではありませんから、こうなるのも致し方ないかとは思います。

結局何が言いたいかと言いますと、チャネル戦略は企業の特色や上層部が取る方針次第なので正解は特に無いと思っています。EC化率が60%を超え、潤沢に利益をあげているブランドも散見されますが、そもそもオンラインから始まってInstagramを集客のメインにしていたのだからそりゃそうなるでしょ、としか思いません。大事なのは自社の取る方針であり、結果として粗利が取れるかどうか、今後も成長していけるかどうかです。EC担当者はどこに手をつければ売り上げのインパクトが大きいのか?が優先されますので、今のような状況でも方針を見失わないで運用していってほしいものですね。

深地雅也
About 深地雅也 10 Articles
株式会社StylePicks CEO。コンテンツマーケティングをメインに、ECサイト構築・運用・コンサルティング、ブランディング戦略立案、オウンドメディア構築、販促企画などをやってます。最近はODM・OEMメーカーのブランド設立支援、IT企業のアドバイザー、服飾専門学校講師、ライター業なども手がけてます。

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