アパレル生産管理のABC ~商社(OEM/ODM)編~

こんにちは、こんばんは。DeepValleyです。

6月に突入しましたね。雨は嫌いじゃないのですが、ムシムシ・ジメジメした季節がやってくるかと思うと若干憂鬱な私です。皆さま、如何お過ごしでしょうか。

さて、若干シリーズ化しつつある「アパレル生産管理のABC」ですが、実はアパレル生産管理と言っても業態によって仕事(役割)や重要視すべきことが異なる、というのはご存知でしょうか。

今回は商社(OEM/ODM)編と題し、筆者が所属していた商社OEM部隊のアパレル生産管理業務にフォーカスして書いてみたいと思います。

アパレル製造業における業態とそれぞれの視点について

まず、アパレル製造業における業態は、大きく分けると3つに分類することができます。

1. アパレル企業(ブランド/メーカー)

2. 縫製工場

3. 商社/OEM/ODM

いずれも生産管理としてQCDR(品質・コスト・納期・リスク)をコントロールするということは共通するのですが、それぞれ役割と視点が異なります。

まず、アパレル企業に関して。ご存知な方も多いと思いますが、主に自社ブランドで企画したアパレル製品の生産を管理します。他2つと比べ、唯一アパレルサプライチェーンの川下に位置するので「自社の顧客に販売する(BtoC)」という視点を持って動きます。

次に縫製工場ですが、縫製工場はアパレル企業より依頼を受けたアパレル製品を製造する現場です。なので生地や副資材などの材料や縫製現場の稼働の管理など、「(自社で)円滑に製造する」視点を持って動きます。

最後の商社/OEM/ODMはアパレル企業と縫製工場の間に入り、アパレル生産を補佐(代行)する役割を担います。視点としては「(様々な)自社の強みを活かし、アパレル企業と縫製工場、その他サプライヤーのニーズをマッチングさせる(仲介する)」が適切かなと思います。

最近ではいろいろな原因(話せば長くなります・・・)によってアパレル企業と縫製工場が直接取引するケースが以前より少なくなっており、商社やOEM/ODMメーカーを通して生産されることが一般的になっています。

※OEM…委託者のブランドで製品を生産すること(Original Equipment Manufacturing)
 ODM…委託者のブランドで製品を設計・生産すること(Original Design Manufacturing)

OEMやODM機能に特化した企業(OEM/ODMメーカーと呼ばれる)もあれば、商社や縫製工場の一部隊がOEMやODM業務を行う場合もある。OEM/ODMメーカーは専門的な技術や生産背景、企画・アレンジ力に強みがあり、商社は資金力や信用力、規模の経済(スケールメリット)を活かした強みがある。OEM業の中間マージンは商社の方が大分低いが、一定以上の信用力がないと取引出来ない。

商社のアパレル生産管理業務とは

一言に商社のアパレル生産管理業務と言っても、これもまた多岐に渡るのですが、基本的に2つの業務に分かれると認識しています。

①「通し」(伝票通し)や「受け渡し」と言われるファイナンス代行業務(帳合とも言う)

②(アパレル企業の)生産管理代行と工場マネジメント

①はモノ作りにあまり関わらず、ほぼ伝票処理と証憑・証跡などのエビデンスチェックがメイン業務です。材料や縫製加工賃などの仕入と製品売上の伝票処理を行い数%のマージン(手数料)を得ます。貿易や為替予約にも関わったりします。

一方、②の方は生産管理代行なのでモノ作りに関わります。とは言え、企画から行うODM部隊は別ですが、OEM部隊は基本的にアパレル企業が縫製仕様書を作成し生地や附属を決めることが多いため、発注などの手配業務と納期・コスト管理、品質管理も兼ねた工場マネジメントがメインです。その分マージンが一定なので利益率が低く、1人あたりの担当するブランドや品番数が多くなる傾向にあります。(記憶が曖昧ですが、下代(納品単価)で年間10億強の売上をほぼ1人で処理していました・・・)

そんな商社のアパレル生産管理業務で大切なことが2点あります。

まず1つ目がコミュニケーション能力、調整力、交渉力です。

前述の通りアパレル企業と縫製工場、その他サプライヤーを仲介する視点ですので、両者の間に入って生産が円滑に進むようにうまく調整しなくてはいけません。その為には相手のニーズを把握し、自社の強み(コストや生産背景など)でどのように価値を与えられるか、たくさんの取引先を絡めて考え、実行する力があると良いです。それによって信用を得ることができれば、業務としてもその後のキャリア形成でも、かなりの強みになると感じます。

もう1つ、それは簿記・会計(与信管理)の正しい知識です。

業務の①と②に共通するのは伝票処理…!とにかく取引社数が多いので、毎月の処理数は半端ではありません。商社は上場企業もしくはその子会社の場合が多く内部統制がかなり厳しいため、どんぶり勘定はNG、一品番一品番で正しい利益を算出すること、エビデンスを入手し正しい月で必ず処理すること(月ズレ・期ズレNG)が原則です。そうするとあら不思議、納期や利益率(コスト)にも必然的に超厳しくなってきます。

また、決算書が読めると強いです。与信管理の観点で非上場企業の取引先や縫製工場の決算書を入手してチェックしたり、月次で所属する課や会社全体のPL(損益計算書)で予実差を振り返ったりと、たくさん触れる機会があります。リスクマネジメントの視点も養われます。

(非上場アパレル企業の決算書確認、個人的に好きでしたw)

さいごに

如何でしたでしょうか。

あまり詳しく知らなかった、という人も多いかもしれません。また、同じアパレル生産管理だけど業務が全然違う!と思った方もいらっしゃるかもしれません。

本当に業務が多岐に渡る(担当ブランドにより異なることが多い)ので、一概には言えませんし、他にも貿易の知識や為替関連など、知っておくべき事はたくさんありますが、長くなりそうなのでまたの機会に・・・

同じアパレル生産管理でも、いろいろな視点を知るとおもしろいなと感じます。(筆者だけ?)

それでは、また。

AYATORI TEAM
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