ココが変だよアパレルの「売れてる」基準

みなさんごきげんよう!代表の深谷です

なんだかんだアパレル業界に15年ほど携わっていますが、思えば高卒で店頭に入ってから、いままで20くらいのブランドプロジェクトに関わってきましたが「売れてんのー?」って聞かれることがあります、そりゃもうめちゃくちゃあります、会う人会う人に聞かれるんじゃないですかね

でもいつも困るんですよね、相手のステータスを考えながら「どうこたえよっかな?」って模索しながら回答しています

なぜなら「売上」「利益」だけでは語りきれない部分が多いからです、そしてそれは「ブランドの世界観」や「ブランディング」といった抽象的なものともまた違うKPI(目標数字)が存在するからです

逆に「売れてない」って何?

逆に「売れてない」ってどういう状況を示すのでしょうか?

良く巷では、「好調ブランド!」や「初日2,000万円!」なんて聞きますし、前年比◯%成長!なんてのも「売れてる」の同義となるのでしょうか?好調でも規模が大きくない。や、前年300%とはいえ、1,000万の売上が3,000万になる。みたいなことは年間数十億の売上をあげてる企業やブランドから見たら誤差とも言える範囲です

売れてないイメージとして、一番良く言われ、わかりやすいのは「前年比未達」ということでしょうか、そしてもう一つは「予算未達/下方修正」といったところでしょうか

「前年比未達」についてはトレンドの流れが大きく起因しますよね、波に乗れれば売上は右肩上がりで上昇しますが、少し外れるとマス層が離れるので下方するのはいうまでもありません。さらにいうと人口減の我が国では市場が少しづつ小さくなってるのはいうまでもありません。

しかしここで問題なのは「予算計画」および「MD計画」なのです。上記のような売上減の外的要因が多く存在するのに内的戦略で前年を越えよう!とチャレンジするのです。

それは中小規模なら当たり前なのですが、大手企業でも同様です。むしろ大手の方が前年より高い売上を狙うと言っても過言ではないのでは?とも思います。

これはすばり「出店先が前年超え」を求めるからです。基本的に上昇し続けることを求められる出店先のファッションビルや百貨店にはブランド側が頭が上がらないことが多々あります。

つまり「売上が下がる要因が揃っていても」前年を超えていくことが求められており、無理な計画を立てざるを得ない状態になるので、結果「前年比未達」「予算下方修正」ということが起こり「売れてない」というレッテルが貼られ、無理をした会社は歯車が狂い続ける。という構図が成り立つのです。

「売れてる」は何を見て判断するのが良い?

それを踏まえ、売れてるの判断基準として考えなければいけないのは「売上高」ではいささか不十分です。

みるべき重要指標(KPI)は「消化率」だと考えています。消化率とは「販売原価」÷「仕入れ原価」で計算されます。例えば年間100万円の仕入れを行い、90万円分売れれば、消化率90%となります。

ただ消化率と言っても2つの目線でみるべきです。

①プロパー消化率
これは定価で商材が販売された比率となります。値下げしていない商材が仕入れ金額に対してどれだけ売れたのか?の指標です。実はここが非常に重要で、MDやDBの腕のみせどころとなります。

例えば100万仕入れ、65万売れたとすると消化率は65%です。例えば原価率32%で販売できているのであれば約200万売上がたちます。そうすると販売管理費を含む経費が売上に対して50%掛かっていたとしても

入金200万-仕入れ100万-経費100万=0

という風にお金的にはトントンに着地できます。セールでいくら消化できたとしても、販売手数料に加えてその他販売管理費が掛かってしまっては上記の計算であったとしたら少しでも値下げした時点で赤字になってしまうのは言うまでもありません。

そして何より「値下げしないで売れる」ということが「そのブランドが売れてる」と言われるひとつの重要な指標となるのです。

②最終消化率
そして次に最終消化率なんですが、上記の例えで言うと35万分の在庫があるので、上代換算すると約110万ほどの在庫がありますが、これを大体はSALEで売ります。どれだけキャッシュに変えれるか?という戦いになります。

OFFしすぎると赤字になるのは言うまでもありません。なるべく高い金額で換金したいところです。しかしここで重要なのは「最終消化率」から導き出される「残在庫」です。

つまりどれだけ「残ったか」=「どれだけ消化できたか?」となります。作った物が売れるのであれば、それはビジネスとして成立する手法があります。が、最終消化率が悪い。ということは「売れてない商材がある」ということなのです。

戦略的に売れなくても良い。という物があったとしても、どんなに原価率の効率がよかったとしても「売れない商材がある」ということはその分「お金を無駄」にしてる可能性が非常に高いということです。

断言しますが、売れてるブランドというのは上記の2つの指標が「好調」であるということが大前提であり、プロパー消化率60-70%、最終消化率90%以上となります。(余談:高けりゃいいってものでもなく高すぎる=在庫が足りない。となります、しかしそれを付加価値にしてる会社もあります)

初日2,000万の売上をとった店舗が年間3億の売上(月2,500万)だとしてもプロパー消化率が50%で、最終消化率が80%在庫が余らせてしまっているのであれば、これは多分、家賃18%の540万、人員5名(少ない?)(20万×12ヶ月=240万×5名=1,200万)の経費だけで赤字になってしまうのです。

下記試算も見てもらえればわかると思うんですが真ん中の計算(P消化64%、最終消化90%)でギリギリです(その他に費用発生したらそこで赤字です)

ざっと計算しました、原価32%でBの売上原価65%にしてます(平均50%OFFくらい※本当はそんな行かないですけど)P=プロパー B=バーゲン 

さいごに

いかがでしたでしょうか?

このあたりの数字を握るのは、大体MDという仕事の人で、深谷はその業務が大好きなんですが、上記で言ったように「無理な予算設計」をさせられ「机上の空論」を掲げられる場合があります。

そんな時は裏側にもうひとつ手堅い「裏の予算表」を持って置いて、下方修正した時にすぐに取り出せるようにしてたりしてました

言うまでもなく、ただでさえ厳しいこの業界で、「手堅い予算」を初めから全力で計画してる人達には比べ、「無理な予算」の戦略を立てることに労力を裂き、結局辻褄が合わせにくくなり悪い結果に終わってしまうこともあります。

その辻褄合わせ=修正が多大な労力であり、結果どこかにシワ寄せが行ったり、販売員の給料が少なかったり、大量の残在庫などに繋がってしまってるところが多いのではないでしょうか?

つまり「売れてるブランド」というのは「プロパー消化率と最終消化率が良い予算計画やMD計画を実行できている」ということがもっとも「売れてる」と言って納得のいく実績だと思います。

そしてMDの方はこの「裏の予算表」実は持ってるひとたくさんいるんじゃないかな?って思いますw(次回この裏予算について書こうかなwうまい隠し方とか)

深谷玲人
About 深谷玲人 33 Articles
株式会社DeepValley(ディープバレー) 代表取締役社長 深谷 玲人(Fukaya Reito)。 アパレル業界に10年経験があり、販売からMD、ブランド長まで経験したのち、ITベンチャー企業に転職し2年半、カスタマーサクセスとしてインサイドセールスのコンサルティングを実施、双方の経験を合わせ、アパレル業界に特化したIT企業として2018年5月に独立。アパレル生産特化システムの開発と、TokyoFashionTechnologyLabで講師を務める。

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