こんな提案をしてくる会社は嫌だ

アパレル企業である程度の決裁権をお持ちの方であれば、ECを含むWeb関連の営業を複数回受けたご経験があるでしょう。筆者も仕事柄、営業はよくする方なのですが、お知り合いの会社さんから「こんな営業受けたんだけどどうなの?」とご相談される事がしばしば。提案資料をそのまま見せてもらった訳ではありませんので詳細な提案は分かりかねるのですが、それでも

「えぇ…、それ絶対売れへんやつやん…。」

と思う事が多数あります。このような事例は枚挙に暇がなく、大手ですらどれだけ適当な提案しているのかと頭痛が痛いです。同じ会議に出席をお願いされる事も多いのですが、こういうケースの担当者は総じて知識・経験共に乏しく、軽く突っ込むと「それは社外秘ですので」と言い訳して逃げていきます。それでも仕事が潤沢にあるのですから会社の看板って凄いなと思います。せめて先人たちの血と汗の結晶を換金するだけの行為はやめてもらいたいものです。

本日はそんな、筆者がよく相談される広告代理店やEC支援会社のよくある提案内容について記載していきたいと思います。アパレルの皆様、こういう提案が出てきたら要注意です。

インプレッションしか保障しない

広告代理店によく見られるソーシャルメディアの提案(SNS広告・インフルエンサーマーケティングなど)ですが、インプレッションやリーチというワードがよく飛び交います。

・インプレッション→投稿がユーザーに表示された総数

・リーチ→投稿が表示されたユーザー数

似たような意味なのでわかりにくいのですが、ソーシャルメディアの投稿は同じユーザーに複数回表示される事もあるのでその違いですね。代理店の提案でよく聞くのはこの「インプレッション/リーチ」がどの程度なのか、という提案ばかり。広告の提案の際によく使われる指標なので致し方無いかもしれませんが、ブランド側は最終的に「売れたかどうか」が最重要事項。表示されようがすぐスクロールされてしまう広告に価値は無いのです。注意点としては、

・どんなブランドが
・どんなクリエイティブを使って
・どう拡散するか
・それによってどんな効果があるのか

このあたりが明確で無いならやらない方がいいでしょう。ソーシャルメディアは直接CVがそれほど高くなる事はありませんので、見込める効果検証が何か担当者すらわかって無い場合は危険です。

こちらの記事のように、効果検証がちゃんとできるなら良いかもしれませんね。

Webサイト流入は伸びるが売上には直結しない

Webサイトへの流入を増やしましょう。例えばCVRが1%だと、1000セッション流入が増えたらCVが10獲得できます。みたいな計算の元、広告提案をしてくるEC支援会社もあります。筆者も以前に似たような話をしてしまい、「Webの人って皆さん同じ事言いますよね」とキレ気味で詰められた事があるのはいい思い出です。

この場合、よく用いられるのはリスティング ・ディスプレイ広告でしょうか。特定のキーワードで検索したユーザーに対して広告を表示させたり、過去に自ブランドのサイトを訪れたユーザーに対してメディアサイト等でクリエイティブを表示させたり、という内容です。

これ、どちらも向いているのは既に一定の認知があるブランドです。まず検索行動って目的があるから起こす訳です。つまり関連キーワードでの検索行動が発生しない場合はクリックすらされません。他店でも多く取り扱いがあったり、コモディティに近いものであれば広告で誘導は可能ですが、それは競合他社も条件は同様。資金力や会員特典など、ショップのパワーバランスで勝敗は決定するので後発で勝負するのは得策ではありません。ブランド公式サイトが、モールより後発で自社ECをスタートした場合はまだやりようはあるでしょうけど。

過去ECサイトを訪れたユーザーに対して広告を表示させる手法も、まずはサイトを訪れている事が前提ですね。また、サイトコンテンツが充実していない状態で流入を促進しても、認知が大して無いブランドの売上には直結し辛い。競合ブランドや競合ショップを検索しているユーザーにクリエイティブを見せたりする事も可能ですが、だからと言ってあなたのブランドの見込み客の獲得には繋がるのかというとまた別の話なのです。余談ですが、見込み客への認知はInstagram広告の方が絞り込みやすくリーチはしやすいでしょう。また、コンテンツを見るにはそのブランドのアカウントを訪れるだけで良いので、ユーザーのストレスも少なくて済む。投稿数とクリエイティブの力=コンテンツの充実度、という捉え方ですね。D2Cブランドがソーシャルメディアを集客チャネルのメインにしているのは、リアルを除くと顧客獲得単価が低いからでしょう。

色々と言ってきましたが、これは広告を非難している訳ではありません。問題なのは広告が機能するケースと機能しないケースがあるのに、一様に同じような提案をしている事に違和感があるのです。

インフルエンサーを起用して拡散施策を講じるなら、そのインフルエンサーの普段の投稿とブランドコセンプトに親和性が無いといけません。しかし、提案側がブランドに対する理解が無い場合、単純にフォロワーが多くPRのポストをしてくれるインフルエンサーのリストを渡され、そこから選ぶというケースも出てきます。しかも、そのリストが代理店の間で共有されていたりしますから、そこから下請けがキャスティングしているんだろうという事も容易に想像がつく。つまり、そこにも余分なマージンが発生しているせいでブランド側からしたら費用対効果が全く合わなくなってくる。それを回避する魔法の言葉が「インプレッションは良かった」なのです。

ブランドを0→1でスタートし、その過渡期にあるようなケースでは上記提案は使えない事がほとんどです。結局は小売に対する理解が無いならEC支援など出来る訳が無いことを改めて知って頂ければ幸いです。

こんなサービス始めました↓

深地雅也
About 深地雅也 10 Articles
株式会社StylePicks CEO。コンテンツマーケティングをメインに、ECサイト構築・運用・コンサルティング、ブランディング戦略立案、オウンドメディア構築、販促企画などをやってます。最近はODM・OEMメーカーのブランド設立支援、IT企業のアドバイザー、服飾専門学校講師、ライター業なども手がけてます。

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