こんにちはDeepValley(ディープバレー)の増田です。
現在の国内アパレル市場規模は9兆6,500億円と言われています。
この数字ですが、実はここ数年はだいたい横ばいに推移しています。
そう考えると、日々目にするアパレル不況の報道というのはやや過剰な気もしてしまいます。
昨今のアパレル業界を取り巻く論調は厳しいものが多く、服が売れないという様なネガティブワードが業界関係者やメディアには溢れかえっています。
ただ一つ一つ中身をみてみると、旧大手と言われる総合系アパレルや百貨店などのヤング・ミセス市場の低迷が報道で過度にフォーカスされているような気がします。
とはいえ、少子高齢化や価値観の変化と共に、個人の衣服に対する支出額は減少しているのは事実です。
一方で、旺盛なインバウンド需要、本物志向と言われている様な、高級品や嗜好品の消費の拡大、スポーツ・アスレジャーなんかはアパレル市場の中でも右肩上がりに成長しています。
そういった背景から考えると、自分達の得意とする市場に強いブランドや企業は好調なのですが、そのほとんどが外資系企業もしくは外資系ブランドのライセンス事業です。
そうなると成長の恩恵を享受できている日本企業が少ない事も、不況報道が先行している要因ではないでしょうか。
テクノロジーが遅れている領域
国内アパレル企業が新しい成長領域を捉えきれない要因の一つとして、テクノロジーの活用が圧倒的に遅れてしまっています。
具体的には下記の様なものが挙げられます。
・アパレル消費の多様化の分析
ここ数年でアパレルに限らず、ネット環境の発達で数年前とは比べものにならないほどの情報量が拡散されるようになりました。
消費者自身でさえも、膨大な情報量に対しての処理が追いつかず、SNSなどを使い、自身の感覚に近い人間をフォローする事で、情報をキュレーションしているのが実情です。
そういった消費者動向に対して、勘や根性、個々の経験だけで商品企画やマーケティングを行なっていても、成功する確率は著しく低いでしょう。
従来の様なマスメディアの情報に対しても多角的に検証され、作られた情報に対しては嫌悪感を示す様にさえなっています。
そのようなことからもテクノロジーを駆使してより正確で本質的な顧客理解というのは必要不可欠です。
・在庫リスクの低減
アパレル業界を賑わせているワードとして、【エシカル】【サスティナブル】という概念があります。
このワードは端的に言うと、環境配慮の事なのですが、アパレル業界の大量生産・大量消費に関しての問題はとても深刻な物になっています。
こういった側面も、以前までは企業の暗部的な扱いでしたが、現代では消費者に情報が拡散してしまい、消費動向にも影響を与えます。
在庫が残ってしまう背景について、根本的には先述の顧客理解にも関連してくる面でありますが、過去の購買データから需要予測を行い、機会損失に対して大量生産で補うという慣習を止めることだけでもこの問題の一端は解決に近づけることができます。
・生産・流通コストの削減
生産・流通のコストに関しても現状多くの企業でかなりのコストがかかっています。
例えば、商品を一つ作るにしても、複数のサンプルをあげ、何度もそれらを送り、送り戻しとしているだけでも、生産コストは嵩みます。
最終的には実物を確かめなければならない物ではありますが、その過程の一部だけでもモニター上でシュミレーションを行う様にするだけでコストを抑える事ができます。
アナログに生産工程を管理している状況も人的なコストを圧迫しています。
さらにヒューマンエラーが起きてしまっているとさらにコストはのしかかります。
流通に関しても、倉庫内でのシステムだけでなく、税関資料の作成・管理を行える様な様々なツールがあります。
これらを使用するだけでも、業務効率や様々なコストを改善し、より戦略的な面やクリエイティブな面に業務時間を当てる事ができるんじゃないでしょうか。
・マスカスタマイゼーションの実現
ファッションテックと呼ばれる領域において、今一番参入が増えている領域です。
ZOZO SUITSに代表される様なサービス、決められたパーツ(項目)の中から、選んでいく様なサービスまで様々にあります。
趣味・嗜好が多様化する中でこういったサービスはますます増えていくのではないでしょうか。
大々的にカスタマイズを唄わずとも、UNIQLOの様なWEB上で丈・寸法のサイズの微調整を行える様なサービスはECサイトで購買を行う上では、今後マストになってくるでしょう。
これからのアパレル企業
これからのアパレル企業の経営に求められていることは、テクノロジ ーがもたらすインパクトを理解したうえで、自社のビジネスモデルへとテクノロジーを有機的に活用していくと言うことではないでしょうか。
多種多様なシステムの中から、なんとなくかいつまんで部分的にデジタル化するだけでは、それぞれに対しての効果を発揮しきる事ができず、シナジーも生まれません。
こうしている間にもテクノロジーを最大限に活用した新しいファッション企業がグローバルだけでなく、国内でも急速に成長しています。
「よくわからない」「うちはプロダクト(商品)で勝負する」と言ってる間に、AmazonやZOZOなどのプラットフォーム企業のプライベートブランドや、テクノロジーを最大限活用した新規参入ブランド、D2Cブランドの様なスタートアップが市場を席巻し、従来型アパレルのままでは防戦一方になっていってしまいます。
一方で、従来型のアパレル企業であっても、既存の概念・枠組みを取り払い、ゼロベースで事業を考え直す気持ちでいれば、チャンスはいくらでもあると思います。
資金力がある分スタートアップよりも動きがスピーディーですし、実際に後発ながらスタートしていて、あっという間にシェアを奪って行く様なサービスもあります。
それに「グローバル市場に売り込むこと」「外部からの人材登用・活用」などは新興企業よりも知名度も実績も資金力もある様な企業の方が圧倒的に行い易いです。
従来の企業ガバナンス形態やサラリーマン型組織から脱却して、ジョブディスクリプションを明確にしたフラットな組織に組織変革することは簡単ではないですが、それができれば必ず再度成長路線になるのではないでしょうか。
最後に
このように業界全体がお先真っ暗なのかと言うと、そうでもないし、これまでも変化が大きい環境下(パラダイムシフト)の中では、多くの機会が生まれています。
漠然と書き綴っていますが、おそらく皆さんも頭ではわかっていらっしゃるかと思います。
とはいえ企業によっては経営方針を180度変えないと難しいケースもあるかもしれません。
しかし、国内市場の変化とデジタル化の進展は、 アパレル業界の競争環境を劇的に変えていき、従来のスピード感ではまるで太刀打ちできません。
大手アパレルだけではなく、国内アパレル産業の発展が生み出した川上・川中・川下に散らばる人財・機能を繋ぎ、業界再興を目指すべきタイミングではないでしょうか。
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