ファッションデザインと模倣について

こんにちはDeepValleyです。

筆者は先日、ファッション・ロー(ファッションの法律)に関するセミナーに行ってきました。

テーマは【ファッションにおける模倣】というものだったのですが、自分自身が企業にいた頃はそのあたりはとても気を使っていたし、それなりに知識も持っているつもりではいたのですが、実際に弁護士の方のお話や、事例に対しての見解を聞いていると、自分の誤った認識や今までに知らなかった事も沢山ありました。

今日はそんな模倣について学んだ事を書いていきたいと思います。

注;あくまで僕が見聞きした上でのお話なので、専門家ではないので内容に責任は持てない事はご了承ください。

ファッション業界で増え続ける法律問題

ファッションにおいての企業間の法律問題は2000年以降に増えてきました。

その主な要因としてあげられるのが

①「ITなどの技術の進歩」

②「ファストファッションの席巻」

③「ラグジュアリーブランドのコングロマリット化」

の3つが考えられると言われています。

①「ITなどの技術の進歩」

IT技術が進歩したことにより、「写真画像がデジタルデータ化」「インターネットの普及」という事が起こり、それが結果的に模倣を容易にしました。

例えば、コレクションや展示会などで発表されている商品をスマホで撮影し、工場に送れば、すぐに模倣デザインを作り始めることもできます。

極端な話、そうする事によって元デザインのブランドよりも早い段階で店頭で販売してしまう事も可能です。

僕自身が実際に見た事例でいうと、一昨年発表されたLOUIS VUITTONとSUPREMEのコラボが発売前に韓国のショップなどで大量に販売されているなんて事もありました。

②「ファストファッションの席巻」

ファストファッションは自社の巨大なインフラ網を駆使して、早ければ生産開始から2週間ほどでトレンドデザインの商品を店頭に並べることが出来て、短いサイクルで商品がどんどんと入れ替わり続けます。

インフラ網の構築というと①であげた技術の進歩という面が大きいですが、それだけではありません。

前述した様にトレンドの商品を短サイクルで入れ替えるというビジネスモデルにより、ちろん意図しているものでは無いかもしれませんが、大量のSKUを扱う中では模倣も多く指摘されています。

例えば、少し前になりますがこんなニュースがありましたね。

日本発「ザ・リラクス」が巨大SPAブランド「ザラ」に勝訴 「ザラ」がコートの形態を模倣

一般的なミリタリーパーカーのデザインであり、不正競争には当たらないとのコメントにもある様に、実際の真偽はわかりませんが、結果的にこういった訴訟に繋がるケースも多々あります。

③ラグジュアリーブランドのコングロマリット化

最後の三つ目ですが、LVMHにルイ・ヴィトンやディオール、ケリングのグッチやバレンシアガ、リシュモンのカルティエ、IWCといったようにラグジュアリーブランドを中心にファッションブランドのコングロマリット化が進んだ事により、会社組織としての機能が強化され、社内に法的な部門も整備するなど、ブランドやデザインの保護を重視する体制が整った事も要因と言われています。

ブランド規模の問題では無いけれど。

前述した様な理由により増えているとはいえ、ファッション業界は昔からデザイン盗用の問題は頻繁に起こっています。

今の時代においても比較的にデザイン模倣に関しては、他業界に比べるとそれほど厳しいという事もないのではないでしょうか。

ココ・シャネルの言葉で

【模倣されることは称賛と愛を受け取ること】

という言葉があります。

寛容さを表しているのかもしれませんが、個人的には、そんな事は地位も名誉もお金も築けたからこそ言えるのでしょうと思いますが….。

一方で、シーズン毎にトレンドが移り変わるという事もあり、逐一模倣を追いかけていてもしょうがないし、一つ一つの商品をそれほど監視してらんないとも思ってしまいます。

ただ、必死に考えて作った商品を真似されて、自分たちよりも安い値段で量産されるなんて、小規模のブランドからしたらたまったものじゃありません。

①でもあげた様に、技術の進歩により模倣出現サイクルは飛躍的に早まっています。

そうすると発売前に模倣品が出回ってしまって、自分たちの投資を回収をする前に売れなくなってしまうなんて事もあり得ます。

そう考えると、事業規模に関わらず、模倣に対しては厳しく対応するべきなのでしょう。

ファッションに関する法律

ブランドを保護する商標法

ブランド名を保護する法律としては商標法です。

商標とは商品やサービスの出所を示すサインで、基本的にはブランドを作ったらまず商標登録をするでしょうし、世に出回っているほとんどのブランドは商標権を取得しているかと思います。

商標権は特許庁に出願して審査を通過しなければ発生しませんが、登録されると10年間存続し、以後更新することで半永久的に保護を受けることが可能だそうです。

(だいたい費用は弁理士さんなどにお願いして8万円くらいだと思います。)

無断で登録された商標を使用する者に対し、販売差止などを求めることができます。

一般的に知名度が高くなる事で、デザインも商標として保護を受けることができるそうです。

例えば、エルメスのバーキン・ケリーなどは立体商標として登録されているそうです。

日本では現在特許庁で審査中の様なのですが、ほぼほぼ通るだろうという見解だそうです。

デザインを保護する意匠法・著作権法・不正競争防止法

意匠法は商標権と同様に特許庁に審査を依頼する事で認められます。

権利を取得するまでに半年から1年かかり、費用面も考えるとシーズン商品を全て意匠法の申請するというのは非現実的になるので、定番商品やSKUの少ないブランドであれば申請する事で、デザインの保護に関しては一番効果の高い法律の様です。

不正競争防止法は申請などをするわけではなく、不正な行為を取り締まる法律です。

一般的にファッション業界でデザイン模倣の際に適用されるのが、この法律です。

著作権法はアパレルでいうとキャラクターや衣服やバッグの表面に付されたプリント、パターンなどが該当して保護を受けられる可能性があるそうです。

ただ、アパレル製品というのは実用品という扱いになる事が基本的です。

著作権法は美術品など文化的な創作への適用が基本の様で、実用品の保護は著作権法では難しいようです。

そのため、現状では衣服自体のデザインが著作権法により保護される可能性は低そうです。

最後に

僕自身はデザイナーではないので、客観的な意見にはなるのですが、いつの時代であっても、デザインというのはこれまでに培ってこられた長い脈絡や多くの洋服の中から、なんらかの影響を受けて作られるものではないかなと思います。

要は常に過去からのインスピレーションを得ていく事が基本と思います。

ただ、だからと言って新しいデザインが生まれないという訳ではなく、時代の感覚やデザインする人自身の経験によって再解釈される事で結果的に新しい物として進化していくのだと思います。

どうしたら自分なりにいいものを作れるのか、自分のステキだと思えるものを辿っていく事、そしてなぜそれに興味を惹かれたのか、その理由がインスピレーションのヒントとなっていくのではないでしょうか。

そういった過程の中では模倣という議論は付き物なのかもしれません。

その為にも、ファッションビジネスに携わるのであれば、知識を持って大事なデザインを守れる様になりたいですね。

それではまた。

AYATORI TEAM
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